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パフォーマンス|最後の晩餐
「最後の晩餐」(Butoh Encounters)
美味しいディナーを創造するよう、シェフが招待されている。観客はこの特別なレストランのゲストであり、そこではテーブルについたまま吉本大輔が食べ物との踊りを繰り広げる。レストランはレオナルド・ダ・ヴィンチの『最後の晩餐』の世界になる。味、匂い、記憶、身ぶりに満たされて。「最後の晩餐」は、束の間の快楽をもたらす食事という体験を豊かにする作品だ。この実験的な試みでは、食べることが生理的な欲求以上のものとなり、食事をすることが食べ物を食する以上のものとなる。大輔が、シェフが腕をふるった料理の、触感、味、匂い、色を讃え、高級料理に命が吹き込まれる。この作品では、シェフと踊り手は同等のクリエーターだ。興味深く、しかし押しつけがましくないこのパフォーマンスは、視覚と肉体による食べ物の物語である。
メニュー:
ファースト・コース:タラバガニ、玉ねぎ、ベリー類(アレルギー物質:タラバガニ)
メイン・コース:ブリスケ、トマト、焼きサラダ(アレルギー物質:バター)
デザート:りんご、バニラ、クリーム、カラメル(アレルギー物質:バター、クリーム)
初演:2017年8月26日 Losæter(オスロ)
コンセプト・演出:Karolina Bieszczad-Stie
プロデューサー:Food Studio
シェフ:Magnus Morveto
ダンサー:吉本大輔、ホシノメグミ
テキスト:Karolina Bieszczad-Stie(コンセプト・演出)
私は、2000年にポーランドのクラコフでお会いして以来、吉本大輔さんと交流し、彼の活動を追いかけてきました(私たちは一緒に多くの「写真パフォーマンス」をしています。中でも私のお気に入りはグダニスクの造船所が舞台のもので、そこでSolidarityが生れました。写真をご覧ください)。2017年には彼をノルウェーに招待し、舞踏とファッション(オスロ・ランウェイでの、ノルウェーの有名なファッション・ブランドHaikw/のコレクション「New You-New Me」)を融合する私のプロジェクトに参加してもらいました。それ以外に、大輔さんとはもっと個人的なプロジェクトをやりたかったのです。というのも、それが彼の最後の海外公演だと聞いて、何らかの形で「さよなら」を言う機会をつくってあげたかったのです。彼が過去の作品で、例えばザクロの実と踊っているところなどを見て、踊りの中で果物を扱う彼のやり方は魅力的で、創造性を広げてくれると感じていました。また、彼が(その際限のない!Facebookの投稿から)ダ・ヴィンチを含む多くの芸術作品を好きなことも知っていました。そして私は幸運にも、オスロにまったく特別な場所―芸術と都市型農業の実践施設Losæterを見つけたのです。この食卓パフォーマンスには12人のゲストが立ち合うことができ、数時間にも及ぶ作品となりました。
Butoh Encountersの芸術監督として、私はどちらもが成長できる形で、舞踏と他の分野との新たなつながりを見出したいと思っています。「最後の晩餐」では高級料理と舞踏を結び付けましたが、最も興味深く感じたのは、2つの、おそらくは正対する分野―贅沢なレストランのディナーと舞踏のグロテスクな世界との接点をつくることでした。境界を超えることに、大いなる冒険を感じました。もちろん、それがどのように観客に受け取られるかはわかりませんでしたが。結果的に、よくバランスのとれたイベントとなり、最初は戸惑っていたかに見えた観客からも、公演後にはとても楽しんだとコメントをいただきました。時に挑戦的で、気まずく感じたとしても、決して押しつけがましくなく、受け入れ難いものでもなかったのです。舞踏を見たことがない人にとっても、とても個人的な舞踏との出会いが生まれました。
この作品の映像記録ということになると…。もちろん、そこにあった瞬間の精神や雰囲気、感情を捉えてはいませんが、起こったことの記憶を共有するためには、このような記録が必要なのです。このパフォーマンスは、ビデオ撮影するには特に難しいものでした。何しろ会場はごくごく小さく、とても親密なイベントでしたから、カメラでその空間を脅かしてはいけないように感じたのです。もし、ビデオカメラの撮影だけのためにパフォーマンスを繰り返すことができたとしたら、もっといい映像を残せたことでしょう。思うに、観客にその場で最大限に素晴らしい体験をしてもらうことと、後々のために最高の記録をつくることとは、常にバランスが要求されるようです…。
吉本大輔
日本大学芸術学部演劇学科で舞台美術を専攻。舞踏の創始者大野一雄の名作『ラ・アルヘンチーナ頌』『わたしのお母さん』等の舞台監督を経て、1982年より舞踊家としての自身の活動を開始。07年に舞踏カンパニー天空揺籃を設立、国内外で精力的に活動を展開する。なかでもポーランドを代表する演出家グロトフスキの研究所との関わりはとりわけ深く、同国での舞踏波及の契機を作った。
最後の晩餐
出演 吉本大輔 ホシノメグミ
コンセプト&ディレクション Karolina Bieszczad-Stie
プロデューサー Food Studio
シェフ Magnus Morveto