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ヒストリー|舞踏の誕生 ウィリアム・クラインの「東京」
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アーカイヴ資料からダンスの歴史を垣間見る。
写真家ウィリアム・クラインが1961年に東京を訪れた際、土方巽、大野一雄、大野慶人の路上パフォーマンスを撮影した一連の写真を通じて、オリンピックを控えた東京の街と、舞踏草創期のエネルギーとが交錯する姿を解説します。
「ダンス・ハプニング」アーカイヴ公開の経緯
1961年初夏、モスクワでの撮影を終えた写真家ウィリアム・クラインは、初めて東京の地に降り立った。約2ヶ月にわたる滞在の最終日に、彼は新橋・銀座の路上で前衛的なゲリラパフォーマンスを撮影する。被写体となったのは、土方巽、大野一雄、大野慶人——のちに舞踏の創始者と称される3人の舞踊家だった。
1964年刊行の写真集『東京』にて発表されたのは4点のみであったが、実際にはこの時、優に600を超えるシャッターが切られていた。2017年にウィリアム・クラインのスタジオ(FILMS PARIS NEW YORK)と当法人で協力し、全652点のデジタル化を実施。同年12月、東京・寺田倉庫G1-5Fで開催された「Dance Archive Project in Tokyo 2017」にて初公開した。
『舞踏の誕生』は、「ダンス・ハプニング」と名付けられたこの出来事を舞踊史の中に位置付けてみるべく制作された映像作品である。上述の2017年のイベントでの展示作に、この度新たにナレーションと音楽を追加した。
舞踏が舞踏と呼ばれる前、オリンピックへと向かう東京の街に渦巻くエネルギーと、路上に躍り出た肉体のエネルギーとがぶつかり合う瞬間を、発掘された一連の写真から紐解いていく。(YK)
Dance Archive Project in Tokyo 2017
ウィリアム・クライン×大野慶人×アノーニ「たしかな心と眼」
https://dance-archive.net/jp/projects/projects_21.html
ダンスアーカイヴ構想会報 第7号
「ウィリアム・クライン『ダンス・ハプニング』アーカイヴ」
ピエール=ルイ・ドゥニ(FILMS PARIS NEW YORK スタジオ・マネージャー)
https://dance-archive.net/download/DANnews07.pdf
ウィリアム・クライン(1928~)
ニューヨークに生まれ育ち、パリでフェルナン・レジェに絵画を学ぶ。1952年より、写真技術を用いた実験的表現を模索。56年に故郷ニューヨークを写した初の写真集を刊行した後、世界の大都市をテーマにした写真集を次々に出版する。従来のタブーを破った広角の構図、粗いテクスチャ、強烈なコントラスト、型破りなフレーミング等は、続く世代に多大な影響を与えた。
土方 巽(1928~1986)
舞踏の創始者。ドイツ系モダンダンス、ジャズダンス、クラシックバレエ等を学びながら、フランスの芸術や文学の影響のもとで独自のダンスを構想する。1959年5月、舞踏の最初の作品とされる「禁色」を発表。前衛と実験を旗印に、同時代の文化人と活発に交流しながら60~70年代のアングラ運動を先導し、舞踏の基礎を築いた。
企画・ディレクション・テキスト:溝端俊夫
映像制作:齋藤正和
写真:
ウィリアム・クライン
細江英公、池上直哉、遠藤平雄
写真レタッチ:北風総貴(ヤング荘)
音楽:星野紗月
ナレーション:川口隆夫
字幕翻訳:ジョン・バレット
© William Klein, Tokyo 1961 for Mr. Klein’s photographs
© NPO Dance Archive Network, 2020