特集

大野一雄・大野慶人デジタルアーカイヴについて

 大野一雄・大野慶人アーカイヴは、舞踏の名を世界に広めた大野一雄(1906~2010)と大野慶人(1938~2020)についての資料約30,000点からなっています。アーカイヴ資料の整理は1990年代半ばに大野一雄舞踏研究所において始まり、2016年からはNPO法人ダンスアーカイヴ構想が管理運営を担っています。このたび、大野一雄・大野慶人アーカイヴの資料の一部をオンラインデジタルアーカイヴとして公開します。

 オンライン公開にあたり、私たちはこのデジタルアーカイヴによって何を一番伝えたいかについて議論を尽くしました。同時代の資料は、著作権等との兼ね合いから、選択的に公開せざるを得ません。その制限の中で、何をどう公開するのかという議論はデジタルアーカイヴを展開するにあたって重要な出発点であると思います。話し合いを重ね、私達がこのデジタルアーカイヴのコンセプトの中心に据えることとしたのは「創作過程にフォーカスする」ことです。

 踊りが消えた後に残されたポスターやチラシ、写真などの周辺資料を公開することは、それだけでも充分に意義があるでしょう。写真一枚、ポスター一枚にも新たな作品を創出する契機が潜んでいるのは間違いありません。しかし、本デジタルアーカイヴでは、「もの」として物理的に残っている周辺資料だけではなく、どのように大野一雄、大野慶人の踊りが生まれてきたのか、デジタルアーカイヴ内を縦横無尽に探索することでそのクリエーションのプロセスを垣間見ることができる場にしたいと考えました。ここで言う「クリエーション」とは、舞台作品を創作するという意味にとどまりません。「生活が踊りの先生だ」と言った大野一雄、「私の舞踏は祈りです」と言った大野慶人において、生きることと創作は不可分でした。そこで、本アーカイヴでは、作品に繰り返し現れるモチーフの細部の記述、それに繋がる生活上の出来事や人と人との関係を表す資料の記述にも注力しています。

 踊りはどこから生れてくるのか。それが私達が共有したいと願っている問いです。かつて上演された作品の情報を提供するだけでなく、踊りが生まれてきた源にまで触れ、新たな感動から新たな創造を生むことのできる、生き生きとした場を創出できないか。そのような思いを持ちながら、ダンスのデジタルアーカイヴのモデル事業として公開資料の充実をはかっていきます。

 本デジタルアーカイヴが、アーカイヴを探索する人自身のクリエーションに寄与する場となることを願ってやみません。

                            溝端美奈(アーキビスト)

データベース概要

クレジット

・システム開発:株式会社ヒトヒトプロモーション
 ディレクション 松尾邦彦
 システム・エンジニアリング 京極真史
 フロントエンド・エンジニアリング or HTMLコーディング 常世健治
 コーディネイション 及川英貴 
・助成:
 公益財団法人東京都歴史文化財団アーツカウンシル東京(2017年-2020年)
 TIS×日本NPOセンター・TechSoup協働事業 助成プログラム&デジタル基盤強化プログラム
 BNP PARIBAS
・デジタイズ協力 蓑口季代子、宮川麻理子、赤沼万里
・英語翻訳 舞・バーンズ
・翻訳アドバイザー ジョン・バレット
・アーキビスト 溝端美奈(NPO法人ダンスアーカイヴ構想、日本デジタルアーキビスト資格認定機構認定デジタルアーキビスト)、大野圭子(大野一雄舞踏研究所、日本デジタルアーキビスト資格認定機構認定デジタルアーキビスト)
・制作統括 溝端俊夫(NPO法人ダンスアーカイヴ構想代表理事)

  • 写真:中川達彦

※写真をクリックするとデジタルアーカイヴに戻ります。