将来的に複数の個人・団体でシステムを共有することを視野に、汎用性の高いアーカイヴシステムを構築することを本開発の目的としました。
原資料の劣化や損傷を防ぐだけでなく、公開性の向上と分野を超えた連携を促進するデジタルアーカイヴは、これからの文化の継承と発展にとって欠かせないものです。小規模なアーカイヴが単独で導入するには負担が大きいシステムを共有化することによって、既存の取り組みを後押しし、組織横断的な連携の不足という日本のダンスアーカイヴの課題を解決していきたいと考えています。
特集
横断的ダンスアーカイヴの構築
大野一雄アーカイヴは、舞踏の名を世界に広めたダンサー大野一雄(1906~2010)の資料を収集・保存・管理することを目的に、大野の活動の最盛期である1990年代半ばに活動を開始しました。公演周辺資料を中心に約25,000点を有し、2016年からはNPO法人ダンスアーカイヴ構想がその管理運営を担っています。
2017年度より3年間、公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京の長期助成を得て、株式会社ヒトヒトプロモーションと共同でデジタルアーカイヴシステムを開発し、2020年11月11日に試験版を公開しました。まずは大野一雄の資料群を順次公開していき、将来的には広く外部と連携し、特定の個人によらない横断的なダンスアーカイヴとなることを目指します。
アーカイヴへのご意見、また問題点や不具合等は、NPO法人ダンスアーカイヴ構想(info@dance-archive.net)までご連絡ください。
開発の目的
共有可能なアーカイヴシステムの必要性
本デジタルアーカイヴの特色 【ユーザー向け】
柔軟性の高い分類方法
ダンスは主として実演芸術であるため、作品そのものは上演と同時に消失し、後にはポスター、衣装、創作ノート、写真といった大量の周辺資料が残されます。そしてそれらの資料の多くは、作品情報や公演記録等と紐づいてこそ意味を持ちます。
そこで、「ひと」「こと」「もの」の3つの大きなカテゴリを設定し、有形無形の多岐にわたるコンテンツを柔軟に受け入れられるようにしました。「ひと」では人物・組織情報を、「こと」では出来事の情報を、「もの」では物的資料の情報をご覧いただけます。
誰でも使いやすいインタフェイス
アーカイヴは活用されてこそ意義があるという観点から、直感的に把握しやすく、専門的な知識や技術を有さずとも使いやすいインタフェイスを目指しました。
検索システムには、キーワード検索とカテゴリごとの絞り込み検索の2種を設け、目的の情報にたどり着きやすいようにしました。
有機的に資料が紐づく設計
CMSの導入により、コンテンツ間のつながりを多彩に表現することを実現しました。
各コンテンツの詳細ページの下部に、関連するコンテンツの情報を自動で収集して表示しています。気になるものをクリックして、アーカイヴの中を探索してみてください。
現在進行形のプロジェクトとの連動
現在行っている事業を紹介する「プロジェクト」記事や、特定のテーマや視点に基づいてコンテンツをキュレーションする「特集」記事に、アーカイヴ資料を引用する機能を実装しています。
現在進行形の出来事とアーカイヴを紐づけ、積極的にアウトプットを行っていくことで、死蔵化を防ぐだけでなく、今の視点から歴史的資料の新たな価値を見出していきます。目指すのは単なる資料室には留まらない、運動体としてのアーカイヴです。
ご利用案内
画像の利用について
著作権法上認められた場合を除き、本サイトに掲載のコンテンツを無断で転用・引用・改変することはできません。
NPO法人ダンスアーカイヴ構想は、調査・研究および図版掲載等の目的に対して、資料画像を提供しております。
希望される資料・用途・期間をお書き添えのうえ info@dance-archive.net までお問い合わせください。
現物資料の閲覧について
現物資料の閲覧はご予約制となります。
閲覧希望資料をお書き添えのうえ info@dance-archive.net までお問い合わせください。
開発のポイント 【開発者向け】
(1) CMSを利用した目録・コンテンツ登録 / 管理業務の簡易化
■ IT技術の非専門家にも使いやすいシステムを、舞台芸術に関わる組織に提供。
■ 外部委託が不要な登録管理フローを構築。アーカイヴの担当者自身が目録・コンテンツの登録管理作業を行うことで、継続的なデータの追加・更新を可能に。
■ 外部の専門業者等に頼らずとも、デザイン性とユーザビリティの高いデジタルアーカイヴの構築を実現。
(2) 舞台芸術に特化した独自開発CMS
■ アーカイヴ資源は、CMSテンプレート/マークアップ言語とは別に構造的に管理。表現とアーカイヴ資源を切り離すことで、貴重な資料を様々な形式でアウトプットすることが可能に。
■ 各資料にキーワードや関連事物を指定することで、膨大な資料を相互に紐付け、コンテンツ間の有機なつながりを表現。
■ 豊富なアーカイヴ資源を自在に引用して記事を作成する機能を実装。記事コンテンツとアーカイヴ資源とは同一CMSシステム上で管理し、相互参照可能。
■ 多彩な表現により、再発見の契機を創出し、研究・創作へのアーカイヴ資源の利活用を促進。
■ テンプレート開発やカスタマイズが容易なため、運営の過程で生まれたアイデアや企画をスピーディに実現可能。
(3) オープンなデジタルアーカイヴシステム
■ 外部データベースとの連携 / 横断検索を視野に入れ、国際的な画像相互運用のための枠組みであるIIIFに準拠して画像を公開。
■ 入力項目は、分野の固有性を反映させつつ簡素化。国際的なメタデータ基準であるDublin Coreに準拠。
(4) セキュリティ監視
■ システム構成ファイル(システム・データベース・画像等データ)のバックアップを定期的に自動保存する機能を実装。加えて、プログラムおよびミドルウェア再起動、ログ取得保存・死活監視のプロセスを自動実行。
■ 不正アクセス対策
- サーバレベル:ファイアウォール(ポート番号、IPアドレス)
- アーカイヴ管理者レベル:IPアドレス、パスワード等による制限
- 利用者レベル:SSL/TLS
(5) バックアップ体制とマイグレーション
■ バックアップシステムとしてクラウドを利用し、物理的な記録媒体は不要。
■ クラウド上のリレーショナルデータベースに保管されている全アーカイヴ資源は、CMSテンプレートと切り離して整合性を維持したまま取り出しが可能。長期保存とマイグレーションに適する。
資料ダウンロード
呉宮 百合香, 溝端 俊夫, 及川 英貴, 松尾 邦彦, [41] 横断的ダンスアーカイヴシステムの構築と公開:大野一雄デジタルアーカイヴを例に, デジタルアーカイブ学会誌, 2020, 4 巻, s1 号, p. s45-s48, 公開日 2020/10/09, Online ISSN 2432-9770, Print ISSN 2432-9762, https://doi.org/10.24506/jsda.4.s1_s45,
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsda/4/s1/4_s45/_article/-char/ja
■ 制作クレジット ■
システム開発:
株式会社ヒトヒトプロモーション
IDEA JUICE
PIXEL LAB
松尾 邦彦
コーディネート:
呉宮 百合香